おはようございます。
先日公開されたMIXTAPE -ラップ調音MAD-に参加しました、芋タルトと申します。
ミドルテンポ楽曲をベースとしたヒップホップ・ラップ調の音MADということで、これまでとは異なる作りに挑戦しました。今回はその感想について書き記しておこうと思います。
曲・題材選定
今回参加して良かったと感じられた一つの要因に、「ディグれた」ことがあります。正直なところ私はラップミュージックに敏いわけではありませんでしたが、本企画に携わり様々な楽曲を聴き漁ったことで、知見を広げられたと感じています。
その中で初期に案じていたのが、今までにも多く見られた「ジャジー・ヒップホップ」、ピアノ等+ドラムのトラックで魅せるしっとりした雰囲気の作品でした。それに応じ、題材も『炎炎ノ消防隊』の環古達というキャラクターにする予定でいました。
しかし(構成を練る段階で放送中だった)『炎炎ノ消防隊』を観ていくうち、ハウメアというキャラクターに惹かれ、題材を変更することにしました。
ハウメアは端的に言うと「敵キャラ」です。クレイジーな女性って良いですよね。飄々としながらもキレっぽく、言葉も荒々しいです。
ハウメアを題材にした場合、ラップバトル等に見られるラップの「暴力的側面」を演出できるのではないか?と思い至り、この組み合わせに踏み切りました。結果、企画内でも他作品と異なるアプローチ、今までにないような作りが出来たかなと思っています。
これに応じ、楽曲も元の方向性と大きく変更してハードな楽曲を選択しました。
Olli - BUUMMM by Olli | Olli | Free Listening on SoundCloud
組み合わせが決まった所で、関門であるリリック作成に入りました。
音声
台詞を乗せるにあたり、今まで意識してこなかった「ライム(韻)」を踏むことに挑戦しました。
ラップ調音MADを作るにあたっての課題は使える言葉が素材に依ることでしょう。純正のラップは無数の言葉から拠り所なく最適解を作らねばならない難しさがありますが、音MADには既に用意された言葉を再構成せねばならないという別種の難しさがあります。
まして今回取り扱ったハウメアの総台詞数はかなり限られたものでした(なんせ一敵キャラなので)。出来る限り韻を踏むため、台詞を組み替えるなど試行錯誤する必要がありました。
工夫した各部分について書いていこうと思います。
おはろー
Find you 水を撒いてドーン
行くぜ ゲリラレディオだ レディオヘッド
アロー 言い訳なんか聞きたくねえぞ
何やってんだよマジで情けねえぞ
流れてくるぜ 街中の思考
今更ちょっと増えたくらいじゃ無駄だよ
ビンビンなアンテナ キレかかってんぞ
陰気な顔してないでブチ暴れるよ
まず前半のまとめ方として、安易ですが「o段で終わる」ように統一しています。そのベースの上で踏める韻を踏んでいく、という風に構成しました。
「Find you~レディオヘッド」は殆ど元台詞まんまです。掴みとして最初に持ってきたい部分でした。 あと「ブチ暴れるよ」でフックに入りたかった!この辺りの流れを作る重要な台詞を先に配置し、間を埋めていきました。
「ビンビンなアンテナ キレかかってんぞ」の部分は次の「陰気な顔してないでブチ暴れるよ」にかけるために台詞を組み替えています。元の台詞は「アンテナビンビン!思考ビンビン(2期3話)」「ババアがキレかかってんぞ(2期15話)」であり、実は話数も大きく離れています。こんな感じの組み替えを以降でもやっています。
全身バイブでマッサージしてやっから
アドラバーストでブッ飛ばすからな
あらら?そうかい だっせぇツラしてんじゃん
邪魔すんなら失せろ 殺すぞテメー!
この部分はしりとりみたいな韻の繋ぎ方をしています。「やっから」→「アドラ」「バースト」→「飛ばす」「からな」→「あらら?」「じゃん」→「邪魔」という感じです(一部強引ですが)。
あとフックの最初なので、「ブッ飛ばすからな」「殺すぞテメー!」というバチバチに攻撃的な台詞をパンチラインに配置しました。
MIXでいうと、パンチライン部分のみGraillon2というVSTで低音を足しています。他にもディレイをかける等、聞かせたいポイントをMIXで強調しています。
大災害は不発だったみたいだからね
言うなれば第四世代への目覚め
アドラバーストの覚醒
脆いじゃねえの灰島製
もっとハイになろうぜ
一つ前の「殺すぞテメー!」を踏まえ今度はe段終わり統一です。「大災害」→「第四世代」で踏みました。「脆いじゃねえの灰島製 もっとハイになろうぜ」の部分は上手くハマったなと思います。
止めることなんてできねーわよ
神経まで届くぜ 電気信号(凄い凄い!)
鎮魂無しじゃ始末もできねーなんて
消防隊ってのはめんどくせー縛りプレイしてんのな!
強引な伝導者 興奮とプレッシャー
汚染された想像力はモーターヘッド
ドーパミンとβエンドルフィンの分泌量を ぶっ壊しちゃうよ(たはは〜)
鍵となる八柱を揃えるのは私達だ
そんじゃあな アデュー
終盤はかなり元台詞を改編しています。「神経」→「信号」→「鎮魂」や「強引な伝導者」→「興奮とプレッシャー」と韻を踏みました。
「伝導者」「プレッシャー」の部分については2種類の台詞を重ねています。正確には文面が同じで発音が違う2種類です。実際のラップミュージックでもこの重ね方がみられたので、それを取り入れてみました。
・・・とこの通り、韻と流れを意識しながら、意味合いを損ないすぎない程度に構成しました。ここまで頭使って音声を作ったのは初めてでした。疲れた。
音声が完成したので次は映像です。
映像
ライムを強調するためにも映像はダークめのリリックビデオにすることにしました。
一部の方はお分かりかもしれませんが、文字部分についてはヒプノシスマイクの影響を思いっきり受けています。
明朝体とゴシック体がドーンと出てくる映像が印象的で、非常に参考にしました。ヒップホップの象徴たるグラフィティアート(スプレーアートなど壁に描かれるアレ)も、ヒプマイを参考に取り入れました。
具体的に言うと上画像の部分です。ランダム配置やディスプレイスメントマップで飛沫・擦れ感を表現しました。
ほかのリファレンスでいうと、ヴァース(前半)部分の雰囲気は『OPENING / 東京ランウェイ 2014 S/S』を参考にしました。
モノクロかつシャープな画面構成で、イメージを補強してくれました。
赤の使い方とか、螺旋状の映像とかはこちら。
上記動画30秒あたりの螺旋映像が特に分かりやすいですね。
ほかにもいくつかダーク系の映像をリストアップし、イメージの具体化に活用しました。余談ですが、リファレンスをジャンル分けしておくと参考にするとき楽で良いですね。(私の場合「ポップ」「ダーク」「和風」「アクション」などのリストを作っています。)
終えてみて
合作全体を見ても感じましたが、やっぱりラップミュージックと台詞MADって相性良いですね!台詞合わせの気持ちよさの原理って漠然としか捉えてなかったんですが、今回ラップの再現を試みて、何を意識すべきか具体的に理解できたような気がします。ほかにもヒップホップ自体に親しめたり新しい映像表現をアウトプットできたりと実りの多い企画でした。
ご覧いただきありがとうございました。